2016年5月16日に発表された「第62回江戸川乱歩賞」。
受賞者は「犬胤 究(けんいん きわむ)」さん。
この方は新人ではなく、過去に他の賞を獲得している現役の作家さんです。
これまで発表してきた作品のジャンルとはうって変わって「推理ミステリー」の作品を書き上げました。
すでに実力のある作家がジャンルを変え「挑戦者」として書いた作品「QJKJQ」。
どのような切り口になるのでしょうか?
気になるところを調べてみました。
「犬胤 究」さんの本名や経歴などもまとめています。
「QJKJQ」の内容とは?
「QJKJQ」変わったタイトルです。
第一印象では「村上春樹」さんの「1Q84(いちきゅうはちよん)」っぽいですね。
言葉遊びのようなものかなぁと。
巷でも、「DAI語?」や「チェスの駒?」などいろいろな憶測が飛び交っています。
中には「ポーカーのツーペア?」という声もありました。
では「QJKJQ」にはどのような意味があるのか、本文を見て見ましょう。
『QJKJQ』 《受賞作品概要》
西東京市に住む女子高生・市野亜李亜の家族四人は、全員が殺し屋だった。
住宅販売員の父は、血を抜いて人を殺す。家事をしない母は、バーベルのシャフトで撲殺する。引きこもりの兄は、噛み付いて失血死させ、つるはしとシャベルで心臓をえぐりだす。そして末っ子の亜李亜は、鹿の角から削りだしたナイフで刺す。
猟奇殺人の秘密を共有しながら、一家は郊外でひっそりと暮らしていた。不動産業界紙を熱心に読む父との短い会話や、近所の公園でこっそり鳩を殺すOL「鳩ポン」の観察などが亜李亜の日常だ。
夏のある日、頭痛を感じて帰宅した亜李亜は、部屋で惨殺された兄を見つける。凶器はパン切り包丁。さらに、めった裂きの死体は、魔法がかかったように消失する。家族はみな殺人者であるため、警察は呼べない。一家は犯人の形跡を探すが見つからず、その翌日には、母が姿を消した。
大雨の夜、問いつめる娘をはぐらかす父は、ポーカーの勝負を持ちかける。亜李亜が渡されたカードは、二回つづけて「QJKJQ」の順番に並んでいた。クイーンとジャックの2ペアにすぎないが、「ESTO PERPETUA」というラテン語の手役で、亜李亜の勝ちだと父はいう。困惑する亜李亜は真夜中に目覚め、テーブルの上の天井に隠しカメラを発見する。 父を問いただし、録画された画像を見るが、そこには母と兄が映っていない。恐ろしくなった亜李亜は、家を出る決意をする。父は「七十二時間後に戻りなさい」と告げ、いつも読んでいる業界紙をなぜか手渡してきた。
宿泊したネットカフェで今日起きた殺人のニュースを見ていると、 事件現場が父に渡された新聞の「今週の不動産情報」欄と奇妙に一致することに気づく。翌朝、地元へ戻り、宿泊費を浮かすため、鳩殺しの秘密を守るかわりに部屋に泊めてほしいと「鳩ポン」に頼む。彼女の職業が客室での殺人や事故の有無を調べるホテル鑑定士であることを知った亜李亜は、 過去に起きたパン切り包丁事件の調査を依頼する。
引用:講談社HP
「ツーペア」予想の方。当たりです!
「ESTO PERPETUA」??聞いたことのないルールだったので調べてみると。
ちなみに私は日本人です。
わかる方おられましたら教えてください。
コメントお待ちしてます。
「ちゃんと仕事しましょうよ!」と言われそうなので探します。
ありました。
何とか単語の意味だけは判明しました。
「ESTO PERPETUA」は「エストー・ペルペトゥア」と読むそうです。
estoは「~である」を意味する不規則動詞sumの命令法・能動態・未来、2人称単数です。
perpetuaは「永遠の」を意味する第1・第2変化形容詞perpetuus,-a,-umの女性・単数・主格です。
主語として想定されるのは女性名詞としての国や州です(元はベネチアを指して用いられた表現)。
「汝、永遠であれ」と訳せます。引用:https://www.kitashirakawa.jp/taro/?p=5476
「汝、永遠であれ」という役なんですかね。
概要の中では触れられていませんが、「QJKJQ」にそれぞれ被害者が当てはまっていって、最後に「K」が犯人だ!みたいな展開になる様な気がします。
触りの部分だけでも十分に深みがあっておもしろそうな作品だなぁと思いました。
最終候補は4作品!
「第62回江戸川乱歩賞」に応募された作品数は全部で338編。
原稿枚数が350~550枚までの書き下ろし長編ミステリー小説です。
第1次予選で92編、第2次予選で22編、最終選考で4編まで絞り込まれました。
残った4編の作品を最終候補とし、この中から受賞作品が選考されます。
その最終候補4編がこちら。
「(仮)ヴィラ・アーク 設計主旨 VILLA ARC(tentative)」家原 英生
「QJKJQ」 犬胤 究
「ラリックの天球儀」光月 涼那
「キャパの遺言」吉里 侑
作品名だけ見ると、どれも方向性の違う内容のようですね。
選考委員はこの5名!
次は選考委員5名の顔ぶれです。
【「第62回江戸川乱歩賞」選考委員】
「今野敏(こんの びん)」(協会代表理事)
- 1979年「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞
2006年『隠蔽捜査』にて第24回吉川英治文学新人賞を受賞。
2008年『果断 隠蔽捜査2』にて第21回山本周五郎賞、第61回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞。
「有栖川有栖(ありすがわ ありす)」
- 2003年『マレー鉄道の謎』にて第56回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞
「池井戸潤(いけいど じゅん)」
- 1998年 『果つる底なき』にて第44回江戸川乱歩賞を受賞。
2010年 『鉄の骨』にて第31回吉川英治文学新人賞を受賞。
2011年 『下町ロケット』にて第145回直木賞を受賞。
「辻村深月」
- 2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞。
2011年『ツナグ』にて第32回吉川英治文学新人賞を受賞。
2012年『鍵のない夢を見る』にて第147回直木賞を受賞。
「湊かなえ」
- 2010年『贖罪』にて第63回日本推理作家協会賞候補作。
- 2012年『望郷、海の星』にて第65回日本推理作家協会賞を受賞。
- 2016年『ユートピア』にて第29回山本周五郎賞を受賞。
錚々たるメンバーが集まりました。
選考委員は「日本推理作家協会」の会員で構成され毎年入れ替わりで選考をしています。
今回特に話題となったのは「湊かなえ」さん。
「第62回江戸川乱歩賞」の選考委員でありながら、同5月16日に自身の作品「ユートピア」が「第29回山本周五郎賞」の選考にかかるという事態!
正直、「他人の作品なんかどうでもいいわっ!」という心境だったと思います。 ←ご本人は口に出していません。
選考の結果、「第29回山本周五郎賞」受賞!
結果として「山本周五郎賞」受賞者が「江戸川乱歩賞」受賞者を選考する形になりました。
言い換えれば、「実力ある方が本物の目で作品を選んでいる」という事です。
これで「面白くない」なんて言ってしまうと小説家全員を敵に回すのではないかと心配になります。
まとめ
今回は「他賞の受賞者」が「本賞受賞者」を選考するという異例の展開となりました。
現実は小説よりドラマチックですね!
2016年現在では「湊かなえ」さんや「犬胤究」さんのような作風がトレンドだという事もわかりました。
おもしろそうな作品ですので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?
「犬胤 究」さんの本名や経歴などもまとめています。
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